『ライフルスコープを使いこなす』
~ライフルやスラッグ銃の性能を最大限発揮するために~
企画:AEGハンターズショップ
写真・文:小堀ダイスケ
最終第6回 スコープ以外の光学照準器 ~ドットサイトとホロサイト~
この連載もこれで最後です。そこで今回は、スコープ以外の光学照準器について解説しましょう。近距離で獲物を狙う狩猟スタイル、たとえば猟犬を使う大物猟や、罠の止めに銃を使うハンターなら理解しておきたいテーマですね。
スコープのようなレティクルではなく、
視界に浮かぶ光点で狙うドットサイト。
素早く直感的に狙えるため、
動く獲物に対し極めて有効。
スコープ以外の光学照準器
ドットサイトとホロサイト
スコープ以外の光学照準器は、「ドットサイト」と「ホロサイト」という、大きくふたつに分けられます。どちらも原則的には等倍で、レンズやスクリーン上に光点が映し出され、そこに獲物を合わせて狙うという点は同じです。しかし構造がちがうため、使い方には注意が必要です。
スコープとは違い、
ドットサイトのレンズは
光点を反射させるため、
あえて光を通しにくい
コーティングが施されている。
ドットの調整方法はスコープと同じ。
MOAの移動量に応じて
着弾点が変化する仕組みだ。
ドットサイトの使い方
まず、ドットサイト(ダットサイトとも呼ばれる)の使い方は基本的にスコープと同じで、倍率がないことと、線状のレティクルが光点に代わった物だと思っていただければ良いかと思います。スコープと違うのは、アイリリーフをあまり気にする必要がない、というところです。スコープの場合は接眼レンズと目の距離がシビアなので、適正な距離をとらないと視界にケラレ(黒い影)が出てしまいますが、ドットサイトではあまりその必要がありません。したがって、銃に載せる位置の自由度が大きくなります。
チューブタイプのドットサイトには、
ブースターと呼ばれるレンズを後付けすることで、
2倍程度までは倍率を上げられる物もある。
ただし、頬付けの位置によって視差が出てしまうのはスコープと同じです。視差については以前解説した通り、目で見ているところとドット(スコープであればレティクル)が指している場所がズレてしまうという現象です。いうまでもなくそれでは当たるはずがないので、毎回同じように、ある程度しっかりとした頬付けが必要になってくるわけです。
光点の形状が
切り替えられるタイプのドットサイト。
ドット(点)だけではなく、
サークル状にすることで
より狙いやすさが増すのだ。
ホロサイトの使い方
いっぽう、ホロサイトは視差が出にくいため(まったく出ないわけではない)、ドットサイトほど頬付けを気にする必要がありません。これは、スクリーンに映し出される光点がレーザー光線によるホログラム映像だからで、銃の構えが多少甘かったとしても、獲物には当たる確率が高いはずです。
どちらも電池が必要
注意しなければならないのは、ドットサイトもホロサイトも、電池を使う機器だということです。いうまでもなく、電池切れになってしまうとまったく使い物になりません。イルミネーションドットが付いているスコープとはここがまったく違う点で、スコープなら電池がなくてもレティクルで普通に狙うことが可能です。
ドットサイトは電池がなければ
単なる素通しのレンズでしかない。
猟場での電池切れには
細心の注意を払いたい。
左の3つは一般的なボタン電池だが、
右はアメリカ製規格のため国内での入手が難しい。
自分のドットサイトに使用する電池の種類を
把握しておくことが重要。
スコープと違って、品質の違いがわかりにくいドットサイトですが、高級品にはオートパワーオフ機能がついている物もあります。猟場でスイッチを切り忘れて肝心なときに点灯しない、などという事態をふせぐためには、やはりしっかりとしたメーカーの製品を選ぶべきでしょう。
集光アクリルからの光を
利用するタイプのドットサイト。
まわりの暗さに左右されやすいのが難点だが、
電池切れの心配はない。
曇り空ほどの明るさがあれば
この程度はハッキリ見える。
ドットサイトやホロサイトの利点
コンパクトで軽い
ドットサイトはスコープのようにレンズを何枚も使用しないため、軽いのが特徴です。とくにオープンタイプと呼ばれるチューブのない物は、全長も短く大変コンパクトです。しかし、猟場で雪などをかぶるとまったく見えなくなってしまうため、扱いには注意が必要かもしれません。
オープンタイプのドットサイト。
文字通りレンズが開放されているため、
雪が落ちてくるような状況では不安が残る。
チューブタイプのドットサイト。
異物には強いが、
そのぶん視界はかなり狭くなってしまう。
近距離射撃に有利
スコープのように遠距離狙撃や精密射撃には向かないドットサイトやホロサイトですが、近距離を走り去る獲物をスラッグで撃つ場合など、運用次第ではとても便利な道具となります。また、散弾銃による鳥猟に使っても面白いでしょう。
銃で狙った場所にキチンと当てるため、いちばん必要なのはもちろんウデです。しかし、銃の性能を最大限引き出し、不利な状況をカバーするための道具として、スコープやドットサイトなどの光学照準器は大変に有効です。
一犬、二足、三鉄砲、という言葉がありますが、光学照準器の使いかた次第では、最下位である鉄砲の優先順位をひとつ繰り上げることも不可能ではないのです。犬に代わって一番になるのはちょっと無理かもしれませんが(笑)、狩猟のスタイルは人それぞれ。スコープやドットサイトなど、様々な道具を駆使して、安全で豊かなハンティングライフを楽しもうではありませんか!
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前回までのお話はこちらから
連載『ライフルスコープを使いこなす』 第1回『スコープとは何か ~光学照準器を知る~』
連載『ライフルスコープを使いこなす』 第2回『スコープのスペック~自分のスタイルに合う1本を選ぶ~』
連載『ライフルスコープを使いこなす』 第3回『レティクルとフォーカス~どこを見てどう狙うのか~』
連載『ライフルスコープを使いこなす』 第4回『スコープを銃に載せる~自分で作業する際に知っておきたいこと~』
連載『ライフルスコープを使いこなす』 第5回『スコープの調整方法~狙ったところに命中させる~』
銃猟歴11年、知識先行型の現役ハンターで、紀州系猪犬でヨメ様(スタッフの一人)と2銃1狗で狩猟中。狩猟、射撃、アウトドア用品の発掘・販売がライフワーク。公務員経験が影響し、狩猟を取り巻く各種法令に関心強め。狩猟誌『けもの道』(三才ブックス)の立上人であり、現在は制作協力という名のもと監修、取材、ライターなど、よろず屋として何でもこなす。射撃場や猟場で見かけたらお気軽にお声がけください。