『ライフルスコープを使いこなす』
~ライフルやスラッグ銃の性能を最大限発揮するために~
企画:AEGハンターズショップ
写真・文:小堀ダイスケ
第3回 レティクルとフォーカス ~どこを見てどう狙うのか~
もういくつ寝ると解禁日。そろそろ新しいスコープでも奮発して買ってみようかな、などという方も多いのではないでしょうか。狩猟の世界は十人十色ですから、自分のスタイルに合ったスコープを自分自身の目と意思で選ぶことが大切です。
前回までの解説で、スコープの倍率やレンズ径など、光学的なスペックを理解したら、次に重要なのはレティクルの選択です。レティクルについては第1回目でも軽く触れましたが、少しおさらいしてみたいと思います。
レティクル
デュプレックス
まず、もっとも一般的なのは、「デュプレックス」と呼ばれる十文字形。これがあればたいていの状況には対応可能です。直感的な狙い方と精密射撃の両方に向く万能型で、上下左右の線は太く、中心の交差部分のみ線が細くなっているところがミソです。
古いスコープの中には、デュプレックスと似た物で細い線の十文字のみで構成されているレティクルもありますが、それでは中心が瞬間的につかみにくく、また、線が細いと景色の木々に紛れて見えにくい場合もあるため、要注意です。
もっとも一般的な「デュプレックス」。
中心の細い線の長さがどの倍率時にどの距離でどの程度の長さになるのか、
ということを把握しておけば、
簡易的なスケールレティクルとしても使える。
ドット系のレティクル
遠距離狙撃をするなら、上下左右にいくつかの点(ドット)が付いた「ミルドット」や、いくつかの短い横線が入った「スケールレティクル」というタイプが便利です。
この場合、注意しなければならないのが可変倍率とレティクルの連動です。倍率の大小にかかわらず、レティクルの太さが変わらない物をセカンドフォーカルプレーン(SFP)、倍率を上げると連動してレティクルも太くなる物をファーストフォーカルプレーン(FFP)と呼びますが、ミルドットやスケールレティクルの場合はFFPの方が使いやすいでしょう。なぜなら、倍率の変化に連動してドットの間隔も変化しなければ、正確な計測ができないからです。
ちなみに正式なミルドットでは、ドットとドットの間隔が100mで10cmになるよう設定されています。この機能をうまく使えば、獲物までの距離を簡易的に計算することも可能です。
点状のドットが並んだ「ミルドット」。
ドットの間隔は10倍時に100mで10cmという設定が基本だが、
製品によっては必ずしもそうなるとは限らないので要注意。
また、空気銃による鳥猟など、
獲物が小さいとドット自体が獲物を覆ってしまう場合もあり、
精密射撃にはやや向かないといえる。
セカンドフォーカルプレーン(SFP)は
倍率に関係なくレティクルの太さが一定。
このタイプではレティクルでの狙い越しがやりにくいため、
ミルドットやスケールレティクルの真価を発揮しにくい場合も。
ファーストフォーカルプレーン(FFP)は
倍率と連動してレティクルの太さも変わるため、
すべての倍率時で素早い狙い越しが可能。
価格的にはSFPよりも高価なものが多い。
スコープの調整機能
視度の調整
スコープという物は、照準部分であるレティクルと、対象物である獲物の両方に同時にピントが合うのがもっとも大きな特徴です。ただし運用上、自分でピントを設定しなければならない場面が最大でふたつあります。まずひとつは、「視度」の調整です。視度とは、レティクルがボヤけずピントのあった状態で見えるかどうか、ということです。
具体的には、スコープを覗きながら接眼レンズの外周にある、視度調整リングをグルグルと回します。すると、レティクルにピントが合ってハッキリと見える位置があるはずです。そこが視度の合う位置ということになり、いちど合わせたら通常は動かしません。これはその人の視力によるので、メガネの方はもちろんメガネをかけた状態で合わせてください。
視度調整リングを回し接眼レンズの位置が前後することで、
レティクルのピントが合う。
本文中にもある通り、
視力によって最適な位置が異なるため、
他人のスコープを借りるような場合は要注意。
視差とフォーカス
そしてもうひとつは、「視差」(パララックス)の調整です。視差とは、目で見えているレティクルの位置と、実際のレティクルの位置がズレる現象をいいます。
見ているところとは違う場所を狙っているのですから、当然ですが弾は外れてしまうわけで、補正しなくてなりません。これをフォーカス機能と呼び、フォーカスには対物レンズ側に調整リングのある「フロントフォーカス」と、チューブの中間左側面に調整ダイヤルがある「サイドフォーカス」があります。
どちらも一長一短ありますが、現在は、獲物を狙ったまま左手で調整のできるサイドフォーカスが主流です。使い方は、スコープを覗きながら調整ダイヤルを回し、ピントが合ったところがもっとも視差の出にくい状態、ということになります。調整ダイヤルには距離が書かれているので、簡易的に距離を計測することも可能です。
接眼レンズまわりに調整リングのあるフロントフォーカス。
AO(アジャスタブルオブジェクト)と表記される場合も。
銃を構えた状態でとっさに調整することが難しいため、
射撃準備に余裕のあるスタイル向き。
現在の主流はサイドフォーカス。
これは最短20ヤード(約18m)から
500m以上無限大まで調整可能で、
近距離の空気銃猟から大物猟の遠距離狙撃まで使用可能。
自分でピントを設定しなければならない場面は最大でふたつ、と前述しましたが、フォーカス機能のないスコープもたくさんあり、その場合、ピント調節は視度調整のみ、ということになります。
フォーカス機能がなければ、当然、視差は出てしまうわけですが、たとえば大物猟の場合、視差を気にする必要はほとんどありません。なぜなら、狙った場所との差は、距離にもよりますが最大でも数センチほどしかないからです。それより、いちいちフォーカスを調整している間に獲物が逃げてしまったり、フォーカス機能があることで、スコープが大きく重くなることの方がよっぽど重要な問題です。
そのため、空気銃による鳥猟など、わずかな視差でも小さな獲物を外してしまう可能性があるような場合や、大物猟でも300mを超えるような遠距離狙撃をするハンターでなければ、フォーカス機能の必要はないかもしれません。
視差は、スコープの正しい覗き方に大きく関わる問題ですので、これについてはまた次回、あらためて解説いたします。
フォーカス機能のないスコープは視差調整ができないが、
通常は100m程度で視差ゼロ(パララックスフリー)の設定になっている物が多い。
また、左側面がフラットなため、銃を担いだ際、
背中に当たったりバッグに引っかかったりすることもない。
今回までの解説で、自分のスタイルに合ったスコープがいったいどんな物なのか、イメージが湧いてきたのではないでしょうか。また、現在スコープを使っているという方も、いまひとつシックリこなかった理由が見えたかもしれません。
スコープは獲物を捉える「目」そのものです。どんなに良い銃でも、スコープが合ってなければ獲れる獲物も獲れませんからね。次回はいよいよ、銃にスコープを載せていきますよ!
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次回のお話はこちらから
連載『ライフルスコープを使いこなす』 第4回『スコープを銃に載せる~自分で作業する際に知っておきたいこと~』
前回のお話はこちらから
連載『ライフルスコープを使いこなす』 第2回『スコープのスペック~自分のスタイルに合う1本を選ぶ~』
銃猟歴11年、知識先行型の現役ハンターで、紀州系猪犬でヨメ様(スタッフの一人)と2銃1狗で狩猟中。狩猟、射撃、アウトドア用品の発掘・販売がライフワーク。公務員経験が影響し、狩猟を取り巻く各種法令に関心強め。狩猟誌『けもの道』(三才ブックス)の立上人であり、現在は制作協力という名のもと監修、取材、ライターなど、よろず屋として何でもこなす。射撃場や猟場で見かけたらお気軽にお声がけください。