『ライフルスコープを使いこなす』

~ライフルやスラッグ銃の性能を最大限発揮するために~

企画:AEGハンターズショップ

写真・文:小堀ダイスケ

 

第2回 スコープのスペック ~自分のスタイルに合う1本を選ぶ~

 

前回は、スコープとはいったい何ぞや、というお話しをしました。初歩的な内容ではありましたが、スコープがあれば狩猟の世界がうんと広がるのだな、ということがわかって頂けたと思います。

そこで今回は、どんなスコープを選べばよいのか、について解説いたします。

 

狩猟スタイルに合わせたスコープ

まず最初に、あなたがどういう狩猟をしているのか、もしくはしたいのか、ということが重要です。同じ大物猟でも、北海道でエゾシカを撃つのと、本州の低山で犬を使ってイノシシを撃つのとでは、使うべきスコープがまったく違うからです。もちろん、銃がライフルなのかスラッグなのか、はたまた鳥猟用の空気銃なのかによっても変わってくるでしょう。

そこで、狩猟スタイル別に使いやすいスコープの種類をいくつかざっと挙げてみました。

 

倍率別

スコープのスペックは原則的に「倍率」×「対物レンズ径」で表されます。

 

4×40なら4倍で40mm対物レンズ、4-16×44なら4倍から16倍の可変倍率で44mm対物レンズという意味です。倍率については前回解説したとおりですが、対物レンズ径の大小によって何が変わるかというと、明るさと視野の広さです。基本的には、直径が大きい方がより明るく広く見えるのです。しかし、そこにはあくまでも「レンズの光学性能が同じなら」という大前提があるのを忘れてはいけません。たとえば、高級品の36mmレンズと普及品の50mmレンズでは、大きさがまったく違うにもかかわらず、高級品の方が圧倒的に明るくクリアで視野も広く見えます。普及品ではレンズを大きくすることでそこをカバーしているわけですが、性能が同じなら、結果として高級品は小さく軽くなり、普及品は大きく重くなってしまうのです。スコープが大型化すると、製品によっては高さや長さで5~10cm、重さで200g以上も違ってくるため、一日中、山を歩くようなスタイルのハンターにとって、これはかなり重要な問題となるでしょう。

 

 

3-12×56と1.5-4.5×18というスペックが

それぞれのスコープに表記されている。

比べるとかなり大きさが違うが、

レンズの光学性能によっては小さくてもはるかに明るい物がある。

 

こちらは1-6×24。

最低倍率が1倍(単倍)のスコープは両目照準が可能で、

わな猟の止めなど至近距離でも使えるので便利。

 

右から24mm、33mm、44mm、50mmの対物レンズ。

大きさや重さが違ってくるため、狩猟のスタイルによって慎重に選ぶ必要がある。

 

チューブ径

スコープのサイズを決める要素は他にもあり、忘れてはいけないのが「チューブ径」です。

これはスコープのいちばん細い部分の直径で、25mm、30mm、34mmなどがあります。最近は30mmが多くなってきましたが、古い製品の中にはまだまだ25mmのものもあります。34mmはあまり一般的ではなく、銃に搭載するために必要なマウントリングの選択肢が極端に少ないため、上級者向きだといえます。

チューブ径の太さで何が変わるかというと、着弾点の調整範囲です。スコープを通して見ている照準線は弾道と並行ではなく、実は少しだけ傾斜しています。一見、銃身と並行に見えるスコープですが、狙った場所にちゃんと当たるのは、任意の距離で照準線と弾道が交わるようになっているからなのです。構造としてはスコープの中にもう1本の筒が入っていて、それを上下左右に動かすことで照準線を操作しています。チューブが太ければそれだけ中の可動域が大きく取れるため、結果的に25mmチューブよりも30mmチューブの方がより広範囲をカバーできるわけです。もちろん、それによって銃の性能が良くなったり、射程距離が延びるわけではないので、あくまでも「スコープで狙える範囲がどこまで広がるか」という問題です。

 

上が30mm、下は25mmのチューブ。

銃に搭載するためのマウントリングも

それぞれの直径に合わせなければならないが、

それについてはまたの機会に解説する。

 

ライフルスコープの内部。

エレクターチューブという筒が中に入っていて、

これが上下左右に傾くことで弾道と照準線が交わる仕組み。

 

調整目盛り

着弾点の調整に関係する要素にはもうひとつ、調整ダイヤルの目盛りがあります。スコープの上にあるダイヤルで上下方向を、射手から見て右側にあるダイヤルで左右方向の着弾点を調整します。

目盛りの単位には1/2、1/4、1/8、などがありますが、分母が「小さい」ほど、1クリックあたりの移動量は「大きく」なります。例えば、1/2なら2クリック、1/4なら4クリック、1/8なら8クリック動かすことで、それぞれ100mで約3cm(50mでは約1.5cm)ほど着弾点が移動するのです。この単位をMOA(ミニッツオブアングル)と呼びますが、ほとんど数学の話になってしまうため、ここでは詳しい説明は省きましょう。ご興味がおありの方はぜひ調べてみることをオススメいたします。

 

上下調整ダイヤル。

UPの方向に回せば着弾点が上がり、DOWNの方向なら下がる。

 

左右調整ダイヤルも同じくRIGHTの方向で着弾点は右へ、LEFTで左へ移動する。

 

調整ダイヤルで気を付けるべきポイントは、使う銃とのバランスです。目盛りの単位は1/4がもっとも一般的ですが、スラッグ銃に使う場合、1/2の方が使いやすい場合もあります。口径が大きく、ライフルに比べてグルーピングも広くなりがちなスラッグでは、着弾点を1cmだけ移動させたい、ということはあまりないはずです。もっとザックリ、15cmくらいは普通に動かすこともあり得るでしょう。そうなると、1/4では50mで40クリックも動かさなければなりません。これはスコープの仕様によってはダイヤル1周分もの量です。しかし1/2MOAなら20クリック、ダイヤル半周分で済むわけです。また反対に、1/8は移動量が少なく小刻みに着弾点を移動させられるので、空気銃に使うことで真価を発揮します。50mなら1クリックでたった約2mmなので、小さな鳥を精密に狙撃する場合など、大いに役に立つでしょう。

 

スコープの内部には不活性ガスが封入されているため、

外気温の変化には影響されない。

経年劣化でガスが抜けると内部が曇ってしまうので、

中古品を選ぶ際は注意したいポイントだ。

 

タクティカルタイプと呼ばれるダイヤルは大きく回しやすいが、

つねに露出しているため、銃を担いで激しく動くと

勝手に動いてしまうことがあるので注意が必要。

 

狩猟用としてはダイヤルにキャップが被さっているタイプの方が安心だ。

いちど調整した後はひんぱんにダイヤルをいじらない、

というハンターにはこちらがオススメ。

 

今回はスコープのスペックを理解し、自分のスタイルに合ったものを選ぶために必要な知識について解説いたしました。

かく言う筆者はこれまで50本以上(!)のスコープを取っ替え引っ替えし、ここ数年でやっと落ち着いてきたところですが、このブログの読者の皆様にはそういった無駄な回り道をしなくて済むよう、ギュッと絞った必要な情報だけをお伝えしていきたいと思います。

 

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次のお話はこちらから

連載『ライフルスコープを使いこなす』 第3回『レティクルとフォーカス~どこを見てどう狙うのか~』

前回のお話はこちらから

連載『ライフルスコープを使いこなす』 第1回『スコープとは何か ~光学照準器を知る~』

 

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