今回は『クレー射撃を始めるには?』と題しまして、クレー射撃に必要な散弾銃の所持許可手続きや、射撃場のことについて、解説します。

一回で書くつもりだったのですが、ちょっと長くなったので、Vol.2で「手続き編」、Vol.3で「気になるところ編」に分けてお送りします。

というわけでさっそく現時点で「全4回」(Vol.1では最初全3回と書いてましたが)複数回に増えてしまいそうな感じですが、ぼちぼちお付き合いください。

手続き編では、実際に銃を手にするための手続きについて解説します。

 

○前置き

日本で散弾銃を所持するには、銃砲刀剣類所持等取締法(いわゆる「銃刀法」)に基づき、都道府県公安委員会(=警察)から所持「許可」を受けなければなりません。

 

所持「許可」とは?

法律的な意味での「許可」とは、本来(自然発生的に)は自由である行為を、公共の福祉の観点から法律で一般的に禁止し、特定の事由がある場合に限りそれを解除して認める、というものです。

本来、何を持とうが個人の自由であるはずですが、銃に関して日本では銃刀法によってその所持が一般的に禁止されていますよね。

ただ一方で、法律上の一定の要件を満たすことで、猟銃などの所持が特別に「許可」されます。

 

一銃一許可制

自動車の運転も、道路交通法でまずは禁止されている一方で、自動車運転免許を取得さえすれば、その種別(例えば「普通自動車」免許の「普通自動車」)に応じた範囲内であれば、国内でどの車を運転しても原則的にOKです。

しかし、銃刀法上の銃の所持「許可」は、「一銃一許可制」と言われるように、一人の人物であっても「1丁の銃を所持するたびに1つの所持許可」を受けなければなりません。

 

許可の用途と欠格事由

所持の理由(許可が出る用途)は、次の3つに限られます。

・標的射撃

・狩猟

・有害鳥獣駆除

鑑賞や自衛を目的に所持はできません。

銃を手にするのに不適格な人物を許可対象から排除するため、そもそも許可を受けられない欠格事由というものも法律上定められています。

欠格事由はかなり細かく定められているのでこのブログでは割愛しますが、銃所持をこれから検討する方は、都道府県警察のホームページなどの銃所持の手続き案内を見て、欠格事由に自分が該当しないことをまず確認しましょう。

掲載県として新潟県警察本部のホームページリンクを紹介します。

新潟県警察本部ホームページ 銃砲等(銃砲・クロスボウ)の所持について

当たり前ですが、欠格事由の内容は都道府県によって差異はありません。

 

では具体的に所持までの手続きを簡単に解説します。

所持許可手続きはすべて都道府県公安委員会(≒都道府県警察)が権限を持ち、お住まいの最寄り警察署の生活安全課が窓口になりますので、それを前提に読み進めてください。

 

①初心者講習

初めて銃を所持しようとする場合、最初に猟銃等講習会という座学の講習を受けなければなりません。

 

 

この講習会の受講は許可の更新のときにも必要なのですが、更新のための講習を「更新時講習」、初心者向けに行われる講習会のことを「初心者講習」などと呼びます。

 

早めに申込みを

講習の申し込みは居住地を管轄する警察署生活安全課の銃砲担当窓口で行います。

講習の開催日程は、都道府県ごとに年度初めに公開されていますが、実施回数や、一度に受講できる人数はマチマチなので、受講を考える場合は早めにスケジュールを確認しましょう。

また、欠格事由に該当しないからといって誰にでも銃を所持させたくはないという警察側の考えから、窓口でなかなか申込書をもらえない、という場合もあり、特に都心部ではその傾向が強いようです。

最近は有害鳥獣駆除での猟銃の必要性が高まって来たので、無駄に厳し過ぎる対応も少なくなりました(昔はいきなり行ったら門前払いされることもあった)。

しかしながら今でも、自分が欠格事由に該当していないこと、許可の用途に沿って所持をしたいということ、許可までに身辺調査を含めたいろいろな手続きを理解していること、などを申し込み時に説明し、自分の「本気度」を警察担当者に分かってもらう必要があります。

 

当日に本気の筆記試験がある!

そして「初心者講習」とは実は名ばかりで、当日は数時間の座学の後に○×形式の筆記試験がすぐに行われます。

試験の内容は、銃の所持や、所持後の使用に関する法令上の知識を問うものですが、これは当日の座学だけでは到底合格できないシロモノで、1ヶ月程度の勉強期間は想定しておいた方が良いでしょう。

試験に向けた予備講習(事前の勉強会みたいなもの)が猟友会などの狩猟者団体で開催されていたり、試験問題集やテキストも市販されていますので、スケジュールに余裕を持ってまずは警察署窓口に相談に行き、早めに講習を申し込んで、十分に勉強してから講習会に臨みましょう。

 

初めて警察に行ってから実際に受講するまでには、2~3ヶ月程度は見込んでおいた方がいいでしょう。

初心者講習の試験に合格すると、講習修了証明書が交付され、次の教習射撃(教習資格認定の申請)に進むことができます。

 

②教習射撃

教習射撃は、銃の分解、組立て、安全な取扱いなどを座学で学んだあと、貸し銃を使って、実際にクレー射撃場で射撃を行います。

 

 

教習当日の体調管理が大切

射撃ではクレーを撃破した点数はほとんど問われません(25枚中2枚程度を撃破すればOK)。

座学で学んだとおり安全に銃を扱えるか、クレーを狙えているか、などが見られます。

教習射撃の内容自体は、それほどハードルは高くありませんので、当日までは事前にテキストにざっと目を通しておくぐらいで大丈夫ですが、長丁場になりますし、体調を整えて当日に臨みましょう。

点数は問われないといっても、実際に銃を構え、練習も含めて100発程度は射撃を行います。

慣れない姿勢を維持したり、普段使わない筋肉を動かしたりしますので、運動不足の方はストレッチなどで体をほぐしておきましょう。

また、当日までに腕や肩周り、上半身の関節や筋肉を傷めないように注意しましょう。

 

教習資格の審査で身辺調査アリ

講習修了証明書を受け取った後、教習射撃を受けるために、教習資格認定(教習射撃を受ける資格があるという認定)を申請するのですが、この申請はやや複雑で、提出書類も多いため、しっかり確認しながら進めましょう。

詳しくは警察署窓口や都道府県警察ホームページにも掲載されていますが、メインの申請書のほか添付書類として

・同居親族書

・経歴書

・かかりつけ医の診断書(精神疾患がないという診断書)

・身分証明書(市町村が発行する、破産宣告を受けていないという証明書)

などが必要です。

また、申請書を提出後、警察による家族や職場関係者、近隣住民への聞き取り調査があり、申請者が普段から近しい人たちと良好な人間関係を維持できているかなどが調べられます。

まだ銃を所持しない段階なのに審査が厳し過ぎるとも思われそうですが、教習射撃では実際に実包(=火薬入りの実弾)を使った射撃をしますし、教習射撃に無事に合格すれば、最後の所持許可まで問題なく手続きが進むのが通常です。

よって、教習資格認定の審査の段階で、申請者が銃を所持しても問題ない人物か否かが実質的に判断されていることになります。

 

教習日程は射撃場との調整

無事に審査が通り、教習資格認定が出たら、教習射撃を受ける日を選びます。

教習射撃は、指定射撃場で年間スケジュールが組まれていますので、警察署窓口を通じ、近隣の射撃場での空き状況を見て受講日を選びます。

教習資格認定の申請から認定が出るまでおおむね1ヶ月前後、さらにそれから受講日を選びますのでさらに1~2ヶ月前後はかかると思っておいた方が良いでしょう。

 

射撃教習に合格すると、教習修了証明書がもらえます。

この証明書の有効期間は1年間なので、その間に、いよいよ最後の所持許可申請を行います。

 

空気銃所持なら教習射撃はナシ

ちなみにですが、クレー射撃や大物猟で必要になる散弾銃ではなく、空気銃だけの所持をするのであれば、教習射撃という手続きはありません。

よって、①の初心者講習を修了すれば、次の③所持許可申請に一気に進むことができます。

 

③所持許可申請

教習修了証明書が手元に届いたら、その有効期間1年の間に所持許可申請をします。

この申請は、具体的に所持したい特定の銃を選び、その銃に対する所持の許可を申請する、ということです。

 

 

譲渡等承諾書をまずはゲット

申請に行く前に、銃砲店で所持したい銃の購入契約を先に済ませ、銃砲店から「譲渡等承諾書」をもらう必要があります。

この承諾書は、所持許可申請時の添付書類として必要なものです。

教習射撃が終わってから銃を選び始めてももちろん問題はありませんが、たいていの方は銃の所持を思い立った段階で、どんな銃を何のために使うかというイメージを持っていると思います。

所持許可申請に譲渡等承諾書が必要なこともあり、①の初心者講習を受けようと思った段階で近くの銃砲店に相談に行き、銃選びも手続きに平行して進めておいた方が良いでしょう。

 

銃・装弾ロッカーを設置

銃を選ぶほか、申請時にはすでに銃と装弾を別々に保管するガンロッカーも設置していなければなりません。

ロッカーにも許可を受けるための基準があり、何でも良いというわけではありません。

基本的に銃砲店経由で入手できるロッカーであれば基準は満たしていますが、自宅建物内に固定するなどの措置が必要になりますので、ロッカーの設置場所も早い段階で検討しておいた方が良いでしょう。

 

ぜんぶ揃えていよいよ所持許可申請

各種書類がそろえば、いよいよ所持許可申請を行います。

申請した後の審査の段階で、再び同居家族、職場関係者、近隣住民への聞き取りがあるほか、ガンロッカーと装弾ロッカーの設置状況の立ち入り検査などがあります。

これらを経て、申請からおよそ1ヶ月前後で晴れて所持許可が出ます。

許可が出ると、所持許可証が警察署で交付されますので、それを持って銃砲店に銃を受け取りに行きましょう。

 

忘れちゃいかん「確認」受け

銃を受け取ったら14日以内に、所持許可証とセットで警察署へ持って行き、銃が許可どおりの銃全長や銃身長かどうかの確認を受けなければなりません。

警察での確認を受ければ、所持許可証にその旨が記載され、これで所持許可の手続きはすべて終了となり、用途に従って銃を撃つことができます。

初心者講習の申請からすべての手続きが終わるまでに最短でもおおむね6ヶ月程度かかりますが、その分、自分の銃を手にしたときの達成感もひとしおでしょう。

2丁目以降、銃を増やしたいときは、座学の経験者講習、実射を伴う技能講習の有効期間内(3年)の修了証明書があれば、所持許可申請だけの手続きで許可を受けることができます。

 

④所持許可にかかるコスト

さて、手続きの流れや手数料を図式化するとこうなります。

警察庁ホームページより引用

https://www.npa.go.jp/safetylife/hoan/ryoujyu.sinnsei.tetuduki.pdf

 

所持許可にかかる手数料

初めて所持許可を受ける場合に必要なコストをざっと計算してみましょう。

まずはっきりしているのが、警察署で必要な各種申請手数料です。

【警察署での手数料】
・猟銃等講習会申込み 6,900円
・教習資格認定の申請 8,900円
・射撃教習に必要な火薬類等譲受許可申請 2,400円
・銃砲所持許可申請 10,500円

 

これらの合計金額は28,600円なので、「案外と安いな」と思われるかも知れませんが、警察署以外で発生するコストを忘れてはいけません。

 

警察外で掛かる手続き費用

警察以外で掛かる費用とは、各種申請書の添付書類のうち、公的機関が発行するものの取得手数料や、かかりつけ医の診断書作成料などになります。

【警察署外で発生する手続き費用】
・かかりつけ医の診断書作成料 約5,000円×2(※)
・住民票交付手数料 約200円×2(※)
・身分証明書交付手数料 約500円×2(※)
・教習射撃受講料 約30,000円(射撃場に支払う)
・教習射撃に必要な装弾代 約3,000円(射撃場に支払う)

「※」マークの書類は、教習射撃認定資格申請と所持許可申請でそれぞれ必要になりますので、「×2」としています。

さきほどの警察署で必要な費用に加えると総額で7万円超にはなって来ます。

また、このほかに所持許可に必要な費用として忘れてはならないものがありますよね?

 

銃やロッカー代はさまざま

許可後に手元に残るものは、銃そのものと、ロッカー類になります。

その金額は

・銃そのもの 数万~数十万円
・ガンロッカー 5万円前後?
・装弾ロッカー 2~3万円ぐらい?

と、かなり不確定な感じが実際のところです。

 

銃の価格は、比較的ビギナー向けのものなら、新銃で20~40万円ぐらい、中古銃で5~30万円ぐらいと結構、幅があります。

また、猟友会で引退する方からさらに安く、あるいはタダ同然で譲っていただける場合もあります。

もちろん、中古銃は相対的に新銃を買うより安い場合が多く、初めて猟銃を所持するためのコストは抑えられますが、自分の所持目的に適ったものなのか、状態は良好なのか、故障の場合に修理は利くのか、などには留意して銃を選びましょう。

 

各種ロッカー類は、大きさや収納力に応じて価格は変動します。

あまり中古品は出回っていませんが、銃と同じく引退する方から譲ってもらえたりすることがあるので、早めに地元の狩猟者団体や銃砲店に相談しておくと良いことがあるかも知れません。

 

さて次回は、散弾銃の種類や特徴について解説します。

 

次回の話はこちら

→Vol.3 種類別、散弾銃の特徴

前回の話はこちら

Vol.1 クレー射撃ってどんな競技?

 

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