『ライフルスコープを使いこなす』
~ライフルやスラッグ銃の性能を最大限発揮するために~
企画:AEGハンターズショップ
写真・文:小堀ダイスケ
第4回 スコープを銃に載せる ~自分で作業する際に知っておきたいこと~
前回までの連載で、スコープについてかなり深くご理解いただけたことかと思います。しかし、スコープという物は当然ですが実際に銃に載せなければ意味がありません。
そこで今回は、そのために必要な最低限の知識とテクニックについて解説いたします。
スコープを搭載するベースとリング
スコープを銃に載せるためには、スコープ本体とは別に「スコープマウントベース」(以下「マウントベース」)と、「スコープマウントリング」(以下「マウントリング」)というふたつの装置が必要です。
マウントベースは土台となる物で、銃によって機関部と一体になっているタイプや、自動銃などの場合は機関部上面に2本の溝を入れることでその部分をマウントベースとしている物もあります。
その場合、別途必要なのはマウントリングだけ、ということになりますので、まずはご自分の銃を確認してみましょう。
機関部の上に別体のマウントベースが取り付けられたライフル。
もっとも一般的なタイプだ。
自動銃の中には機関部上面の溝に
直接マウントリングを取り付けるタイプもある。
このタイプの場合、10mm幅用のマウントリングを用意する。
銃身が交換できる散弾銃には、
カンチレバーと呼ばれるマウントベースが銃身に取り付けられている物も。
このタイプであればスコープごと銃身交換が可能だ。
マウントベース
マウントベースには10mm幅(11mmと表記される場合もあり)と20mm幅の2種類があり、1枚の板状になっている物やふたつに分かれている物、マウントリングを固定する複数の溝がある物など、様々なタイプがあります。
特に、複数の溝があるタイプの場合、その溝の幅によって「ウィーバー規格」と「ピカティニー規格」のふたつがあり、パッと見ただけでは区別がつきにくいので注意が必要です。
マウントベースがふたつ(ツーピース)に分かれているタイプ。
古い形式のボルトアクションライフルに多く見られる。
上はピカティニー規格で下がウィーバー規格。
溝の幅が違うため、用意するマウントリングも
それぞれの幅に合わせなければならない。
マウントリング
次にマウントリングですが、一般的なのは25mmと30mmの2種類です。
スコープのチューブ径が34mmや40mmなどといった特殊な規格の場合、マウントリングの選択肢は極端に少なくなります。
ご自分のスコープのチューブ径が何mmなのかを確認してから、マウントリングを用意するようにしましょう。
左が30mmチューブ用、右が25mmチューブ用。
スコープのチューブ径に合わせたマウントリングが必要だ。
左が10mm幅マウントベース用、右が20mm幅マウントベース用。
それぞれ高さが異なる点にも注意。
左がウィーバー規格用、右がピカティニー規格用。
マウントベースの溝にはまる部分の厚さが違う。
マウントベースの溝にマウントリング下面の突起がしっかりとはまり、
スコープが正常に載せられた状態。
スコープ搭載時の注意事項
高さ・水平・アイリリーフ
銃にスコープを載せる際、気を付けなければならないのが「高さ」と「水平」と「アイリリーフ」です。
高さ
スコープの「高さ」とはすなわちマウントリングの高さであり、背の低いマウントリングを使えばそれだけスコープの位置も低くなります。しかし、あまり低いマウントリングにすると銃とスコープが接触してしまったり、場合によっては載せられない、ということも起こります。だからといって高すぎれば今度は照準線が上がって頬付けができず、正しい照準もままなりません。
銃とスコープを的確な高さで組み合わせるというのは意外と難しく、実際に取り付けてみなければ分からない部分が多いため、ある程度のトライ&エラーを繰り返す必要があるかもしれません。
マウントリングが低すぎる例。
銃にギリギリぶつかっていないように見えるが、実際は
発射の反動で撃つたびに銃身とスコープが激しく激突するため
あまり好ましくない。
マウントリングが高すぎる例。
銃にはぶつからないが照準線が上がるため頬付けが甘くなり、
場合によっては銃床にチークピースをつける必要があるかもしれない。
空気銃の弾倉を避けるため、
スコープを若干前にずらして載せるためのオフセットマウントリング。
こうした物は実際に現物合わせをしなければわからない部分も多い。
水平
次に水平ですが、これはレティクルの横線が水平であるかどうか、ということです。
スコープ自体を動かすことで位置決めをし、マウントリングに仮止めしたスコープの上に水平器を置くことでだいたいの水平は出るものの、最終的にはその人の目で見て決めるのがいちばんです。銃の構え方にも人それぞれのクセがありますし、目をつむった状態からパッと銃を構え、目を開けた時点でレティクルの横線が水平になっているかどうか、で位置を決めましょう。
スコープに水平器を載せることである程度の水平は出るが、
銃自体やそもそも載せる台が水平でなければ本当の意味での水平は出せない。
逆に、物理的に水平が出ていたとしても
そのシューターがかまえた状態で水平に見えなければ意味がないため、
最終的には撃つ本人がスコープを覗いて決める必要がある。
対象物に重りをつけたヒモを垂らし、
スコープで覗いてレティクルの縦線と合わせることで水平を出す方法。
原始的だが意外と正確。
アイリリーフ
アイリリーフとは、接眼レンズと目との距離のことです。
これが適正な位置にないと、視界に黒いカゲ(ケラレ)が出てしまいます。
ケラレがなく、クッキリと真円に見える位置を探します。
このとき重要なのは、正しい頬付けをすることです。
その上でスコープを前後に少しずつ動かし、適正な位置をみつけましょう。可変倍率スコープの場合、倍率によってもアイリリーフが変わってきますので、猟場でいちばん多く使う倍率に合わせてから作業をすることが大切です。
スコープが射手側に近すぎる(もしくは遠すぎる)例。
視界にケラレが出てしまう。
アイリリーフが適正であれば、
スコープの視界が丸くクッキリと見える。
リングのネジ締め時の注意事項
マウントリングのネジを締める作業には、トルクドライバーがあると便利です。
取り付けネジは強く締めればいいというものではなく、かといって緩ければ撃っている最中にスコープがズレてしまいます。
スコープメーカーによって指定のトルク値が決まっていますが、おおむね20~25in/lbsくらいを上限にすると良いでしょう。
一般的なL字棒状のレンチを使う場合でも、均一な力で締めることに留意しながら、締める順番をX状にすることを忘れてはいけません。
締め付けトルクを設定できるトルクドライバーがあると安心。
あまりスコープを取り替えないのならネジロックを塗るのも有効だ。
マウントリングのネジを締めるときは、
8の字状の順番(写真の番号順)に少しずつ締めていく。
スラッグ銃やライフルの場合、発射の反動でスコープがズレてしまうことがあります。
それを気にするあまりネジを強く締め付けることは、前述の通り御法度です。マウントリングのネジ山を切ってしまってはもう使い物になりませんし、そうならないまでも、アルミ製のスコープチューブは意外と簡単に潰れてしまいます。
それを防ぐため、マウントリングの内側に松ヤニをまぶすと効果的です。松ヤニの滑り止め効果はかなり強く、マグナムライフルの反動でもしっかりとスコープを定位置に固定してくれます。
固形の松ヤニは楽器店でバイオリンの弓用として販売されている。
少量をつぶして粉状にし、マウントリングの内側にまぶす。
侮れないスプリング式銃
また逆に、空気銃だからといって侮れないのがスプリング式です。
ほとんど反動のないプリチャージ式と違い、スプリング式空気銃の反動は想像以上に強く、精密機器であるスコープをいとも簡単に破壊してしまうこともあります。
スコープという物は内部が故障していても分かりにくく、ずっと当たらないと悩んでいていたのにスコープを交換した途端よく当たるようになった、という話も少なくありません。そしてそれはスプリング式空気銃である場合が多いのです。
これを防ぐには、マウントリングの内側に麻布を敷くのが効果的です。松ヤニも同時にまぶすとなお良いでしょう。麻布は100円ショップで手に入ります。
スプリング式空気銃用には
マウントベースとマウントリングが一体になった頑丈な物を使用した方がベター。
通常の物を使う場合も、マウントリングの内側に麻布を敷くことで
スプリング式空気銃の反動を緩和することができる。
スコープを銃に載せるという作業は、慣れてしまえば意外と簡単です。いつも銃砲店におまかせしている、というシューターも、いつかは挑戦してみてはいかがでしょうか。
自分の意思で選んだスコープを自分で銃に載せれば、獲物や標的を狙う気持ちが高まるはずです。また作業中、スコープを見たり覗いたりする時間が増えることで、自分のスコープに対する理解度も深まるでしょう。
次回はスコープで狙った場所に命中させるための調整方法について解説いたします。
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次回のお話はこちらから
連載『ライフルスコープを使いこなす』 第5回『スコープの調整方法~狙ったところに命中させる~』
前回のお話はこちらから
連載『ライフルスコープを使いこなす』 第3回『レティクルとフォーカス~どこを見てどう狙うのか~』