1.国産24倍スコープ

「どっちが良いのか?」問題

次期猟期に向けた熾烈なライフルスコープ選びはすでに始まっているかと思います。

当店では最近よくお問合せでいただくのが、「国産の24倍スコープ、どっちが良いの?」というもの。

「国産の24倍スコープ」とは次の2機種のことです。

 

Vixen ビクセン 30mmチューブ ライフルスコープ 6-24×58mm SFP IR付きレチクル:MD10/G4

ライト光機 30mmチューブスコープ 4-24×50mm サイドフォーカス付き IRレチクル:G4

 

どちらも日本メーカー製、国産、30mmチューブ径、イルミ付きレチクル、最大倍率24倍という共通点があります。

ビクセンとライト光機という日本を代表する光学機器メーカーのスコープとあって、レンズはクリアで明るく、性能は海外でも高い評価を受けています。

同倍率帯の海外ブランド輸入スコープに比べると手の出しやすい価格で、保証対応も国内で受けられます。

 

右上がビクセン6-24x58mmスコープ

左下がライト光機4-24x50mmスコープ

 

ちなみに、ビクセンライフルスコープはもともとドイツ狩猟界向けに製造・販売が開始され、現在はドイツ国内を中心にヨーロッパ各国でも人気のメイドインジャパンのライフルスコープとなっています。

ドイツの猟場は日本に似ていて、薄暗い森林地帯が多いそうです。

天気も狩猟シーズンは曇りや雨が多く、雪や少雨ぐらいであれば出猟する日本の狩猟シーンとも似ており、ビクセンスコープは日本の猟場でもその性能を十二分に発揮します。

各スペックのラインナップも豊富で、エアライフルから装薬銃、近距離から遠距離まで、さまざまなシーンに合わせた1本を選ぶことができます。

 

ライト光機は、様々な海外ブランドスコープのOEM生産を手掛けており、その技術、生産能力には高い評価が与えられています。

そのためか、国内向け自社ブランドスコープは基本スペックの4種類に限定されており、スコープ本体にはブランドロゴさえ刻印、印字されていないという、影に徹した外観になっています。

 

どちらもマットブラックで塗装されている

ライト光機(左)は比較的にやや光沢がある印象

ビクセン(右)は光の反射をより抑えた感じがする

ライト光機にはブランドロゴさえ記名されていない

 

このように遠距離射撃向けのスコープを載せたいと思う方にとってこの二つの国産スコープはそれぞれ魅力的なのですが、「似たようなスペックなので、どっちを選ぶべきか迷う」ということになるようです。

 

ビクセンスコープのチューブ中央下部にはスペックとシリアルナンバー

MADE IN JAPAN は海外でも人気

 

ブランドロゴさえ記名されていないライト光機スコープ

MADE IN JAPAN とシリアルナンバーのみという徹底ぶり

 

基本スペック比較

2種類のスコープの迷いの原因となっている基本スペックを、比較しやすいように表にしてみました。

 

数値だけを見るとちょこちょこ違いがあります。

特にこだわりの強い項目があれば、その一点で比較して選べば良いと思いますが、それもなかなか難しいと思います。

 

今回のブログでは、各スペックを要素(表の右端欄を参照)ごとにまとめて深堀りしていきますので、スコープ選びの参考にしていただければ幸いです。

 

なお、本ブログ中、両スコープの正式名称をその都度書くのは文字数を無駄に増やすことになりますので、ビクセン6-24x58mmスコープは単に「ビクセン」ライト光機4-24x50mmスコープは単に「ライト光機」と呼称することとします。

 

2.スペック深堀り比較

①サイズ

下限倍率の違い

最大倍率はどちらも24倍ですが、最小倍率は、ビクセンは6倍、ライト光機は4倍です。

ほかの特徴とも合わせた私の個人的な印象ではありますが、ビクセンはより遠距離射撃を想定した仕様になっており、ライト光機は比較的近い距離から遠距離までをカバーする汎用性を持ち合わせていると考えられます。

 

対物はビクセン、接眼はライト光機がデカい

対物レンズはライト光機は50mm(外径58mm)に対し、ビクセンはレンズ径58mm(外径68mm)という大口径となっています。

 

左がビクセン、右がライト光機

比べると数字以上にビクセン対物レンズの大きさを実感

 

ビクセンの方が見える視界も広くなるのでは?と思うかもですが、後述しますが実は24倍時の100m視界はほとんど同じです。

対物レンズがデカいメリットは、よりレンズに取り込まれる光が多くなりますので、比較的に視界が明るく見える、ということになります。

 

スペック上、対物レンズ径は誰しも気になるところですが、実は接眼レンズ径はビクセンよりもライト光機が大きくなっています。

 

ビクセンの接眼チューブ径は40mm

ライト光機は43mmで、少し大きい

 

レンズ越しに見える視界の実際の広さはほとんど同じですが、接眼レンズが大きい分、ライト光機の方がレンズを覗いたときの印象では、より広い視界が得られていると感じられるかも知れません。

 

ド迫力のビクセン、細マッチョなライト光機

ビクセンは30mm径チューブに58mmという大きい対物レンズの仕様になっており、その差も相まってグラマラスな形状をしています。

付属のサンシェードを装着すると全長はなんと416mmにもなります。

ド迫力のライフルスコープとなり、その性能もさることながら、十二分に所有欲を満たしてくれそうです。

 

一方でライト光機は、24倍スコープながら控えめな50mm対物レンズとなっており、スマートでスッキリした細マッチョな印象になっています。

 

上がビクセン、下がライト光機

同じ最高倍率24倍でも並べて置くと、そのサイズ感は歴然

 

各種スペックはスコープ選びに大事ですが、趣味のものですし、見た目も大変重要です。

搭載予定の銃との統一感も欲しいところかと思いますので、この辺りは納得いくまで大いに悩んでください(笑)

 

②視界

24倍時の視界はほぼ同じ

対物レンズ径は違いますが、24倍時の視界はほぼ同じです。

100m視界は、ビクセンで1.4m、ライト光機で1.5mとなっており、スペック上は実はライト光機の方が広いのですが、肉眼ではほぼ同じと言えるでしょう。

実際に覗いてみたところを撮影してみました。

スコープをカメラ三脚に固定し、スマホカメラの手持ち撮影を行ったので、あまり綺麗には撮れていませんが、倍率の違いなどは感じていただけると思います。

事務所前から対岸の公園に設置されている馬型の遊具(内)を鹿に見立てて、スコープで覗いてみました。

距離は100~110mぐらいです。

 

こちら、ビクセン6倍の視界です。

ちょうど陽が差して来たこともあり、58mm対物レンズで非常に明るく見えます。

 

次にビクセンの24倍時の視界です。

100m先の鹿ぐらいなら、十分に精密な射撃が可能になりそうです。

太陽が雲に隠れてしまったので、やや暗くなりましたが、視界の明度は肉眼とあまり変わらないほどです。

 

こちらはライト光機の4倍時の視界です。

ビクセンの6倍時に比べると当然ですが対象は小さく見えます。

見え味は非常にクリアな感じです。

 

こちらはライト光機の24倍時の視界。

ビクセンの24倍時とほぼ同じ視界に見えますね。

ただし、ビクセンよりはやや暗いような印象受けますが、これには対物レンズの径の差が出ているのかも知れません。

 

ライト光機は近距離もイケる

どちらもサイドフォーカスが付いており、対象物までの距離に合わせて精密に焦点を合わせられます。

 

ビクセンのフォーカスは30mから開始。

30mという距離は、射撃という観点では近距離の範疇と言えるかと思いますが、大物猟での接近戦や、ワナの止めさしなどには不向きでしょう。

仕様としては、中~遠距離射撃に特化していると思った方が良さそうです。

 

最大距離側は、最終の数値は500mで、その先は一気に無限遠となります。

国内での猟場だと、北海道でも射撃時の最大距離は500mもないでしょうから、十分と言えます。

 

一方、ライト光機のフォーカスは10mから合わせることが可能です。

最小倍率4倍、レチクル移動量が100MOAということも含めると、ライト光機は意外にも近距離を意識した設計なのではないかと予想します。

ゼロインは50mや100mでするにしても、10mの距離での着弾点を頭に入れておけば、接近戦でも使えてしまうことになります。

 

そしてライト光機のフォーカスの最大距離側の目盛りは、最大数値は1500mで、それから無限遠となっています。

1500mに照準することは日本ではまずないでしょうけども、海外でのエクストリーム遠距離射撃や、広大な猟場などでは1000m超えを狙うこともあるでしょうから、そういったシーンでの使用も含めた設計なのでしょう。

 

ビクセンはアイレリーフ固定

ビクセンのアイレリーフは99mmで固定となっています。

つまり、倍率を変えてもスコープからの目の位置を変える必要がないのです。

スコープを覗いて対象に狙いを定めたままズーム操作をすることができる、ということになります。

 

一方でライト光機は多くのスコープがそうであるように、倍率によってアイレリーフが少し変動します。

このことは、スコープ搭載時に、よく使う倍率のアイレリーフに合わせてスコープの取付け位置を決め、運用中に倍率を変えるときには頬付けの位置を変えてアイレリーフに合わせる必要が出てきます。

 

③レチクル

ライト光機はG4のみ

どちらにもG4が用意されています。

特にライト光機のレチクルはこれしかありません。

距離や状況に関係なく、基本的にド真ん中を素早く撃つならG4レチクルがシンプルかつ実用的かと思います。

 

ライト光機のG4レチクル(実写)

レチクル中央に意識が集中されやすい

 

ビクセンにはMD10も

ビクセンにはG4のほか、MD10も用意されています。

ドットを使って上下の着弾位置補正や、左右の狙い越しの当たりが付けやすくなります。

倍率10倍時には正しくスケールとしても使用でき、レチクルを使用して距離や獲物の大きさを計測することも可能になります。

ビクセンのMDレチクル(イメージ図)

十字線の上に均等にドットが配置されている

 

レチクルの違いはそれぞれに特徴がありますが、一番の選定基準は自分の好みや、自分が感じる見やすさ、狙いやすさというものになるかと思います。

イメージ図で検討するほか、可能な限り実物を覗いていろんなレチクルで狙った印象を知っていただくのが良いかと思います。

 

精緻なゼロインが可能なビクセン

エレベーション、ウィンデージダイアルの1クリック移動量は、ライト光機は1/4MOAですが、ビクセンは1/8MOAで設計されています。

1/4MOAの1クリック移動量では精密射撃ができない、というわけではありません。

しかしながら、より射撃精度を求めるのであればビクセンの方を選ぶべきと言えるでしょう。

 

ビクセンのウィンデージダイアルには移動量の表示はありませんので、事前にスペックを確認するか、取扱い説明書を確認しましょう。

中央の穴に六角レンチを差し込んで回すと、ダイアルを空転させることができ、ゼロリセットをすることが出来ます。

ゼロリセットとは、ゼロイン作業後、その状態でレチクルを動かさずに目盛りのみを0に再設定できる機能です。

 

ライト光機は1クリック1/4MOAと明記されています。

ダイアルを上に持ち上げると目盛りが空転しますので、ゼロリセットができます。

 

ライト光機は近距離を意識?

クリックの最大調整幅は、ビクセンは30MOAとなっており、長距離射撃仕様でやや狭い移動幅となっています。

エアライフルで重いペレットを撃つ場合など、弾の落差の大きい射撃をするには、ベース側で傾斜を調整できるエラタックアジャスタブルマウントや、コンペイセイションマウントなどを併用して、傾斜を稼ぐ必要がある場合も出て来るかも知れません。

 

一方でライト光機は100MOAと幅広い調整が可能になっています。

弾道の落差の大きい射撃のほか、ビクセンに比べるとより近距離でもゼロインが可能ということになります。

 

④強度

どちらも装薬銃対応

ビクセンは完全防水を謳っていまして、雨や雪の猟場でも使用に問題はないでしょう。

 

ライト光機は3m防水となっていて、「完全~」と比べると見劣りする印象を受けますが、単純に言うと水深3mの水中に沈めても大丈夫ということになり、水中でスコープを運用することはないので、実猟下では十分な防水性能と言えます。

 

耐衝撃性はどちらも1000Gをクリアし、しっかり実銃(装薬銃)に対応している強度があります。

 

⑤オプション・サービス

イルミ・ゼロリセット機能

どちらのレチクルもイルミネーション機能付きになります。

イルミネーションはレチクル中央の交差部分が、赤くドットで光ります。

 

海外では30mmチューブスコープはイルミ付きが当たり前のスペックになっているのだそうです。

ビクセンはもともとドイツ狩猟界に売り込んで来たスコープで、ライト光機も海外メーカーのOEM生産を多く手掛けているということから、どちらのブランドでも30mmチューブ径のスコープはすべてイルミ付きになっています。

 

ビクセンのイルミネーションダイアルは接眼フードの上部に配置されています。

輝度調整はOFFから順次上げていくものになりますので、スコープを覗きながら環境に応じて見えやすい輝度に調整していく使い方が想定されます。

 

ライト光機のイルミネーションダイアルは、サイドフォーカスと一体型になっており、フォーカスダイアルのさらに外側に位置しています。

輝度調整の数字の間がそれぞれOFFになっているので、好きな輝度に1クリックで点灯させることができます。

 

サービスはビクセンが上手

ライト光機の付属品は取扱説明書を除くと電池のみ、という非常に質実剛健なセット内容になっています。

メーカー保証は1年ですが、多くの製品でも1年保証というのは見受けられますので、通常の対応かと思われます。

 

ライト光機の商品内容はスコープ本体のみ

自社ブランドが目立たないようにする戦略かも?

 

一方でビクセンは付属品が多数セットされています。

サンシェードのほか、シースルーキャップ、大型ターレット(2個)、交換用ネジ(1本)が付属し、スコープの使い勝手を向上させています。

メーカー保証は驚きの3年となっており、過酷なアウトドアで使用するアイテムとしては安心のバックアップ体制と言えます。

販売価格(いわゆる定価)もライト光機よりわずかではありますがお安くなっています。

サービスを含めたコストパフォーマンスはビクセンに軍配が上がるでしょう。

 

付属品多数のビクセン

使い勝手を向上させている

 

3.どっちが良いのか?

さて、両スコープの違いを見て来ましたが、「けっきょく、どちらが良いの?」という質問には、やはり即答出来かねるということは、お分かりいただけたかと思います。

 

とはいえどちらか選ぶとしたら、各要素に優先順位を付けてもらうと選びやすいと思われます。

どちらも名機と言えますが、24倍という最高倍率以外の部分にかなり違いがあり、どの要素を優先すべきかは、やはり使用される猟場の状況、搭載予定の銃とのバランス、好み、などなどご購入者様で重視するポイントは異なって来ると思います。

 

悩むこともまた楽しいスコープ選びですが、本ブログが選定の一助になれば幸いです。

 

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