
マウントリングの取付けトルクについて、たびたびお問合せをいただきますので、本稿を参考にしていただければ幸いです。
リングの取付けトルク値
取付けトルクについては、メーカーごとに似通ってはいますが、かなりマチマチです。
お問合せいただいた場合はその都度、メーカーホームページなどで判明したものについてはお伝えしております。
ご自身で調べる場合は、「●●(英字メーカー名) scope ring torque」などのワードで検索すると、メーカーホームページのほか、海外の方が書いてくれているものに、けっこうヒットします。
メーカー側でもトルク値を公表していない場合も多々ありますので、そういった際は、当店での作業目安の数値をお伝えしております。
【当店作業トルク値(目安)】
リングスクリュー:18~22 in lbs
ベーススクリュー:20~25 in lbs
マウントリングといっても、アルミ製、スチール製といった素材の違い、形状の違い、マウントレールとの嵌合の具合等々、いろいろ状況が異なるので、作業トルク値はけっこう幅があります。
下限値、上限値が絶対的なものではありません。
まずは下限値で様子を見てから、そこから中間値付近まで締める。
射撃をする中でもし緩んでくるようなことがあれば、次は上限値付近まで締める、といった感じで作業をしております。
ミリタリースペックのリングの場合は、ベーススクリューは35 in lbsぐらいが上限値になっているリングもありますので、やはり最初に各メーカーホームページなどで公表値が掲載されていないか確認することをお勧めします。
リング取付け時の注意事項
注意事項としてはいくつかありますので、取付け前にご確認お願いいたします。
いきなり上限値まで締め付けない
メーカーから公表されている数値も、そこまで締めろという推奨値なのか、締めるにしてもそこまでにしておけという上限値なのか、判然としていない場合があります。
なので公表値の一番高いトルクまで締めるのではなく10~15%ほど低い数値で様子を見ることをお勧めしております。
日本の場合、海外ほどドカドカ撃つことも無い方がほとんどかと思いますので、上限値まで締めずとも定期的に緩みがないか確認することで足りる場合も多いのではないでしょうか。
均等に締める
前後のリングのベーススクリューの締め付けトルクが違っていたり、複数のリングスクリューで締め付けトルクが異なっているのは、非常に良くありません。
撃発時の衝撃を均等に受け止めることができず、ネジだけでなくスコープ自体の損傷につながる恐れもあります。
締め付けトルク値は重要ですが、各スクリューが均等なバランスで締め付けられていることが肝要です。
ロックタイトは必要か?
ロックタイトの要否
いわゆるロックタイトと呼ばれるネジの緩み防止剤があります。
振動で緩んでくることを防止してくれるので、いろんなネジに塗布されていまして、マウントリングのネジに使う方もけっこうおられるようですし、銃砲店でも使用されているところもあります。
ロックタイトの使用に関しては、ネジが緩みにくいという大きなメリットがあり、その種類や使い方、効果を熟知されている方は積極的に使用していたり、ベーススクリューだけ使っている、などの場合もあるようです。
一方で、ネジを破損させる可能性があり、おそらく所持者の多くはロックタイトの使用経験はそこまで豊富ではないだろうという前提のもと、当店としては使用を推奨していません。
ロックタイト使用を推奨しない理由
その理由はいくつかあります。
(1) リングやスコープを銃から下ろす場合や、載せ替える場合に、ネジを破損させる可能性が大きいこと。
(2) ロックタイトの塗りムラがネジの損傷につながる恐れがあること。
(3) リングのメーカー側でロックタイトの使用を推奨していないこと。
※これはすべてのメーカーを確認したわけではありませんので、「絶対に」とは言えません。
推奨トルクを公表しているメーカーは、むしろ「ロックタイトは不要」と言っているものもありますし、スチールリングの多くは工場出荷時で錆び止めの油が塗布されているものが多いことからも、少なくとも多くのメーカー側は、ロックタイトの使用を前提にしていないのだろうなと推察しています(※ロックタイトの使用前には通常、脱脂が必要なため)。
ロックタイト使用は自己責任で
以上のような理由で、当店としてはロックタイトを使用するよりは、出来るだけ適正なトルク値で、かつ均等に締めつける、ということが重要であり、また本来はそれで足りるのであろうと判断しております。
もちろん前述のとおり、所持者ご自身の判断でロックタイトを使用することを否定しているわけではありません。
メリット、デメリットをご理解のうえ、ご自身の判断で使用していただければ良いかと思います。
均等に締めつけるために
最も大切なことは、適正値で、かつ均等に、というところです。
それをこなすためにはトルクレンチという、一定のトルクでネジを締め付けられる道具が必要です。
もちろん当店でも以下のトルクレンチを取り扱っておりますので、ご検討いただけると幸いです。
WHEELER FIREARM ACCURIZING TORQUE (F.A.T.) WRENCH ホエラー 銃器用トルクレンチキット
22,000円(税込24,200円)

銃猟歴11年、知識先行型の現役ハンターで、紀州系猪犬でヨメ様(スタッフの一人)と2銃1狗で狩猟中。狩猟、射撃、アウトドア用品の発掘・販売がライフワーク。公務員経験が影響し、狩猟を取り巻く各種法令に関心強め。狩猟誌『けもの道』(三才ブックス)の立上人であり、現在は制作協力という名のもと監修、取材、ライターなど、よろず屋として何でもこなす。射撃場や猟場で見かけたらお気軽にお声がけください。