大口径スコープで長距離射撃
1 はじめに
ビクセンのライフルスコープ第3回目ブログです。
今回のライフルスコープは、お待たせいたしましたビクセンのフラッグシップモデル、Vixen アルテス 5-30x56ED、34mmチューブ径の長距離射撃向けスコープを見て参ります。
2 ロングレンジを楽しむなら
スコープの分類軸
今回取り上げるスコープは、Vixenアルテス5-30x56ED ELD2、ロングレンジ用です。
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ロングレンジ向けのわかり易い特徴は、対物レンズ径の大きさです。
アルテスはEDレンズ(特殊低分散グラス)と呼ばれる、色収差や色のにじみを抑える高価なレンズが採用され、フルマルチコートは言うまでもなく、見え味はシャープ、キレのある像が得られる、Vixenスコープの中でも大口径ハイエンドに位置するスコープです。
目的に合ったライフルスコープを選ぶ際は、初回ブログで触れた目的別の用途をご覧いただき、ハンターズショップ様へご相談ください。
今回のブログ記事では、実際のフィールドで使い方に悩むことなく存分にご使用いただけるよう、Vixenアルテスの製品ハード面ではなく、本スコープを使ったロングレンジ向けシューティングを意識した内容に寄せて話を進めて参ります。
今回、本記事内では、MOAという単位が出て参りますが、狩猟向けとして、1MOA=約3㎝(100m先)にて話を進めて参ります。
注:厳密には3cmではなく+/-2.9cmとされ、この3cmという解釈では射撃距離が長くなるほどに着弾点に誤差が生じることが知られていますが、ここでは分かりやすく約3cm(100m先)として話を進めます。
アルテスのレチクル
Vixen アルテス5-30x56ED、ドイツの狩猟市場へ製品投入後からそれなりの月日が経過しているこのモデル。
ロングレンジ向けとしての評価は高く、当方も気に入って使用しているのがELD20レチクルです。
この他にも、MLR20(中心がクロスではなく、ドット)というレチクルや、更には標的射撃に特化した超極細レチクルを採用した特殊なレチクルも用意されています。
レチクル名の後ろに付いた「20」という数字。
これはレチクル設計時に基礎としている設定倍率です。
第2焦点面レチクルでは設計倍率でのみ、レチクルに刻まれた指標(数字)を射手は情報として読み取ることが出来ます。
アルテスの場合、 20倍率で100m先の視界を見たときがそれに該当します。
それでは少し深掘りしていきます。
ELD20レチクル外観
Vixen アルテス 5-30x56mm ELD20のレチクル写真です。
センターはドットではなく、クロス(十字)。
アルテスのイルミ色は、いずれのレチクルでもグリーンとレッドに自由に切り替えることが出来ます。
色変更の方法は、電源ボタンを数秒長押しです。
森の中など光が乏しい環境では赤がおススメです。
太陽下では十分な輝度があるので、赤色を使っても差し支えはありませんが、赤を凝視し続け目が疲れてしまった場合、曇天程度であればグリーンの十字も快適に使えるよう考えられています。
次はELD20レチクルの詳細を見ていきます。
ELD20の読み取り方
こちらの図。
レチクル中心に見える的の大きさは縦横60㎝(グリッド部分)です。
見え方が異なる理由は、両方とも倍率は20倍に固定されていますが、左側が距離200m、右側は距離100mという違いにあります。
Vixenアルテス 5-30x56mm ED ELD20のレチクルには、水平方向と下方向にある目盛りの横に数字が付いています。
目盛りの単位は1MOA。
これを踏まえて図を説明します。
あらかじめ標的(又は獲物)の大きさが判っている場合
まずは右側の図。
100m先、倍率20倍に設定、レンズ越しに捉える標的はレチクルの目盛り20MOAに収まって見えます。
では左側の図、200m先ではどうでしょう。
倍率は変わらず20倍、同じ標的が今度はレチクルの目盛り10MOAに収まりました。
用意していませんが、400m先の場合、この的は5MOAに収まります。
つまり、あらかじめ標的のサイズが判っていれば、レチクル上のMOAから標的までの距離を導くことも可能だということです。
例えば、何れかの距離に鹿、或いは狩猟鳥獣を捉えた場合、レンジファインダー無しでもおおよその距離に当たりをつけることができます。
標的までの距離を見つけるという意味においては、サイドフォーカスを使っても同様の情報を得ることが出来ます(ピントが合った地点が標的までのおおよその距離)。
1/8MOAの移動量
Vixenアルテス5-30x56ED、ウィンデージとエレベーション、1クリック当たりのレチクル移動量は1/8MOAです。
この移動量というのは、1クリックを動かすと、100m先において約3.75mm (=約3cm÷8)レチクルが移動することを意味します。
1/4MOAを有するスコープより細かな調整が可能です。
1/8MOAの場合、手前の距離50mでは1クリックで半分の約1.87mm、距離200m先では100mの倍の約7.5mmのレチクル移動量ということになります。
エレベーションはゼロリセット式
Vixenアルテス 5-30x56mm EDにはゼロストップ機構は付いておりませんが、ゼロリセットという機能が備わっています。
ゼロイン完了後、エレベーションキャップを取り外し、ゼロ(数字の0)が刻まれている位置にキャップを合わせ、固定するというものです。
こうすることで、50mゼロイン、100mゼロイン、200mゼロインというセッティングに対し、ダイアルで着弾点補正をする際、ゼロの位置を正確に把握しておくことができます。
3 まとめ
ということで、Vixenアルテス 5-30x56mm EDのハードウェア、外観ではない部分について触れてみた今回のブログ。
ロングレンジ射撃、装薬銃に限らず、エアライフル向けとしても大変面白いアルテスですが、エラタック傾斜マウントと組み合わせることで更に別次元の射撃体験を得ることができます。
ライフルスコープ、その他マウントについての詳しいお問合せはAEGハンターズショップ様へ是非どうぞ。
4 実機のお試しなら
令和6年6月29日(土)、場所は京都 京北綜合射撃場。京北綜合射撃場様、ヒーローズインク様、AEG様による3社共同主催、京北エアライフルスクールにおきまして、Vixen RS実機展示が予定されておりますので、ご参加いただき、ハンズオンにてお試しください。
5 Vixenアルテス 5-30×56 ED 仕様表
【VEMA:プロフィール】
ドイツと狩猟とおいしい話という狩猟用光学機器に関する情報発信Websiteを運営しています。
DoRaSight(ドラサイト)、ドイツ製のデントラーマウント、及びエラタックマウントの日本販売総代理店です。
ドイツの狩猟見本市、狩猟事情にまつわるブログも不定期に書いています。よろしくお願い申し上げます。
銃猟歴11年、知識先行型の現役ハンターで、紀州系猪犬でヨメ様(スタッフの一人)と2銃1狗で狩猟中。狩猟、射撃、アウトドア用品の発掘・販売がライフワーク。公務員経験が影響し、狩猟を取り巻く各種法令に関心強め。狩猟誌『けもの道』(三才ブックス)の立上人であり、現在は制作協力という名のもと監修、取材、ライターなど、よろず屋として何でもこなす。射撃場や猟場で見かけたらお気軽にお声がけください。