もうすぐ全国的に猟期が始まりますね。

ハンターの皆さんにとっては待ちに待ったシーズン到来でしょう。

 

猟期に狩猟で獲って良い鳥獣は「狩猟鳥獣」として法令で定められていて、狩猟免許試験でも覚えたはずですよね。

猟期前には名前や見た目をおさらいしている人も少なくないと思います。

 

しかし、「狩猟鳥獣」についての理解は名前や種類だけではありません、というのが今回のお話です。

 

 

1 狩猟鳥獣とは

(1)法令の定義

「狩猟鳥獣」と聞いたとき、狩猟読本などでその種類を確認できることはご存知かと思いますが、法律上のそもそもの定義をご存知でしょうか。

 

鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)

(定義等)

第二条 この法律において「鳥獣」とは、鳥類又は哺乳類に属する野生動物をいう。

2~6 略

7 この法律において「狩猟鳥獣」とは、希少鳥獣以外の鳥獣であって、その肉又は毛皮を利用する目的、管理をする目的その他の目的で捕獲等(捕獲又は殺傷をいう。以下同じ。)の対象となる鳥獣(鳥類のひなを除く。)であって、その捕獲等がその生息の状況に著しく影響を及ぼすおそれのないものとして環境省令で定めるものをいう。

8~10 略

 

このように鳥獣保護管理法上、「狩猟鳥獣」とは「希少鳥獣以外の鳥獣で環境省令で定めるもの」とありますが、そもそも「鳥獣」とは、「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」と定義づけられています。

 

すなわち獲って良い狩猟鳥獣とは、そもそも「野生動物」だということです。

 

 

(2)野生動物であることの意味

さて、ここでいう「野生」の意味ですが、一般常識的な感覚で理解もできますが、法律上の用語として一定の解釈が与えられています。

 

法律を所管しているのは環境省ですが、省内部局の鳥獣保護管理室が監修している『鳥獣保護管理法の解説 改訂5版』(大成出版社)によると

 

以下引用

この場合の「野生」とは、当該個体が元々飼育下にあったかどうかを問わず、飼主の管理を離れ、常時山野等において、専ら野生生物を捕食し生息している状態を指している。

『鳥獣保護管理法の解説 改訂5版』(大成出版社)

 

と、解説されていて、概ね一般常識的な「野生」の意味と大きく違うところはないと思いますが、大切なところは最後の「専ら野生生物を捕食し生息している『状態』」を指すというところかと思います。

 

すなわち飼育個体を山野に放つなど飼育放棄された直後とかではなく、「専ら」という枕詞もあるとおり、ある程度の時間経過が伴っている「状態」が、「野生」ということになります。

 

このことが何の意味を持つのか、と言いますと。

熊、猪、鹿などは狩猟鳥獣(もちろん鳥類も含む)ですが、それらはあくまで野生のものに限られるということであり、捕獲の直前まで人が飼育していたり、購入して間もない養殖個体を狩猟の対象にしてはいけないということです。

 

 

2 飼育鳥獣≠狩猟鳥獣

(1)過去の事例

2021年に岩手県内で、無許可で飼育していたツキノワグマを猟銃で射殺するという事件がありました。

当然、飼育されていたツキノワグマを銃で射殺する行為は狩猟とは認められず、動物愛護法違反や銃刀法違反などの疑いで被疑者が逮捕されています。

 

私は本件に関して報道でしか事件の概要を知ることができず、また、動愛法や銃刀法違反の疑いと報じられていますが、少なくとも飼育下にあるクマ(ツキノワグマ?)が狩猟鳥獣として認められなかった一つの事例と考えて良いと思います。

 

なぜならば、報道では被疑者の反応として「『狩猟の一環と思っていた』と容疑を否認している」と報じられていることから、被疑者はその飼育下のクマを「『狩猟鳥獣である』と考えていた」だろうことが類推できるからです。

 

(2)気を付けたい想定事例

飼育下のクマに関する事件を紹介しましたが、もちろんこれは猪、鹿、雉、鴨などほかの狩猟鳥獣になり得る鳥獣にも当てはまります。

 

少し考えただけでも危なっかしい行為としては

・飼っていた猪や鹿が飼えなくなったので猟期に銃で処分しよう

・飼っていた、あるいは買って来た養殖の猪や雉(その他狩猟鳥獣)を使って、猟期に銃猟をしよう

などが想像されます。

 

これらの行為の対象となる鳥獣は、鳥獣保護管理法でいう「狩猟鳥獣」には当たらず、狩猟行為で処分することは関連法令に違反する可能性が非常に高いと言えるでしょう。

※もちろん、猟銃の使用方法に違反行為があれば「狩猟鳥獣」うんぬんを言う以前に銃刀法違反にもなり得ます。

 

 

もうすぐ猟期が始まりますが、自分からこういった行為をしないとしても、他人からの依頼などに巻き込まれることも避けたいものです。

現実にも、そして根拠法令においても、狩猟はあくまで野生、自然を相手にするものとしっかり認識して、知識や技術を積み重ねていきましょう。

もちろん、大いなる自戒を含んで結びといたします…忍々

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