どうもこんにちは、番頭です。

先日、twitterでも書いたのですが。

 

猟銃を使った事故や事件があると真しやかに「警察官が所持者宅を抜き打ち検査で回ってくる」というウワサが流れます。

これは本当なのでしょうか?

 

誤解の無いよう先に結論を申し上げますが、原則的かつ現実的にありません。

 

以下、簡単にまとめます。

 

1 銃刀法の「立入検査」

(1)条文の規定

銃刀法に基づき、銃砲や実包を保管する者に対し、警察官は報告を求めたり、その保管場所に立ち入ることが出来ます。

まずは条文を確認しましょう。

 

銃刀法

(報告徴収、立入検査等)

第10条の6 都道府県公安委員会は、第十条の四又は第十条の五の規定により銃砲等及び実包等を保管する者に対し、これらの規定による銃砲等及び実包等の保管の状況について必要な報告を求めることができる。

2 都道府県公安委員会は、第十条の四第一項の規定により保管する銃砲が猟銃である場合において、盗難の防止その他危害予防上当該猟銃又は当該猟銃に適合する実包の保管の状況を調査する必要があると認めるときは、その必要な限度において、警察職員に、当該猟銃又は当該猟銃に適合する実包の保管場所に立ち入り、保管設備、前条の帳簿その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる

3 警察職員は、前項の規定により立ち入る場合においては、あらかじめその旨を関係者に通告しなければならない。

4 警察職員は、第二項の規定により立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

5 第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない

6 (略)

 

そんなに難しいことは書いていませんが、すげー要約しますと

  • 銃砲や実包の保管状況について報告を求めるのに条件はない。
  • 保管する物が猟銃の場合で、かつ、その猟銃または実包の保管状況を調査する必要がある場合には、必要な限度でそれらの保管場所に立ち入り、検査ができる。
  • 立入検査の場合は、あらかじめ関係者に通告が必要。
  • 立入検査の場合は、身分証を携帯し、提示しなければならない。
  • 立入検査は犯罪捜査のためにしてはならない

と、こんな感じでしょう。

 

少なくとも、立入検査については、事前の通告が法律上義務付けられているので、所持者自身が知らされていない「いきなり立入検査」が来ることは、原則的にないものと言えます。

 

(2)実際の運用

実際の運用については、通達とか、都道府県ごとに制定される事務取扱規則なんかに書いてあるのかな?と思い調べてみると、そもそも、銃刀法施行規則(=内閣府令)に、すげー詳しく書かれていました。

 

銃刀法施行規則

(立入検査)

第八十八条 法第十条の六第二項の規定による立入検査は、四十八時間以前にその旨を関係者に通告し、かつ、日出から日没までの時間内である場合に行うものとする。ただし、関係者の承諾を得た場合又は猟銃の保管に関する危害予防上特に必要がある場合は、この限りでない

 

これによると、立入検査をするには、48時間以上前に関係者に通告しなければならないと規定されています。

よって警察担当者は、少なくとも2~3日前には「立入検査にお伺いしますよ~」と相手方である所持者に通告する必要があるのです。

 

一応ただし書きで「関係者の承諾を得た場合」、「危害予防上特に必要がある場合」は、この条件に限られなくてもいいとはなっていますが、濫用する規定ではありませんし、通常は心配する必要はないでしょう。

 

立入検査自体は犯罪捜査ではありませんので、警察官といえど個人宅にいきなり押し掛けて好き勝手できません。

検査の実効性や、意味合いを考えれば、やはり「いきなり立入検査」を行うことは現実的な手段ではないと言えます。

 

 

2 火取法の「立入検査」

(1)条文の規定

猟銃所持者が注意すべき法律は、銃刀法のほかに火薬類取締法(「火取法」)があります。

実包や、実包を自作する際に必要な火薬類が火取法の規制対象となりますが、火取法にも立入検査の規定があります。

 

火薬類取締法

(立入検査等)

第四十三条 経済産業大臣、都道府県知事又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)の長は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、製造業者、販売業者、消費者、廃棄者又は火薬類を保管する者の製造所、販売所、火薬庫、消費場所、廃棄場所又は保管場所に立ち入り、その者の帳簿書類その他必要な物件を検査させ、関係者に質問させ、又は試験のため必要な最少限度の分量に限り火薬類を収去させることができる。

2 都道府県公安委員会は、この法律の施行に必要な限度において、警察職員に、製造業者、販売業者、消費者、廃棄者又は火薬類を保管する者の製造所、販売所、火薬庫、消費場所、廃棄場所又は保管場所に立ち入り、その者の帳簿書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる

3 海上保安庁長官は、この法律の施行に必要な限度において、海上保安官に、製造業者、販売業者、消費者、廃棄者又は火薬類を保管する者の製造所、販売所、火薬庫、消費場所、廃棄場所又は保管場所に立ち入り、その者の帳簿書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。

4 前三項の職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係者の請求があるときは、これを呈示しなければならない。

5 第一項から第三項までの規定による立入検査は、関係者の正当な業務又は行為を妨害するものであつてはならず、且つ、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない

 

銃刀法の条文よりも読みにくいですが、めっちゃザクっと要約すると

  • 警察官は火薬類の保管場所に立ち入り、検査することができる
  • 立入検査は、関係者の正当な業務又は行為を妨害するものであってはならないし、犯罪捜査のためにしてはならない

と規定されています。

 

銃刀法の規定と似ていますが、事前通告までは求められていないようです。

しかしながら、「じゃあ火取法に基づいて『いきなり立入検査』があるかも!?」と心配するのは杞憂と言えます。

 

(2)実際の運用

事前通告が法令上の義務ではないにしても、「関係者の正当な業務又は行為を妨害」してはならず、「犯罪捜査のため」でもない以上、やはり事前に対象者と日程調整しないと検査の実効性を確保できません。

 

また、火取法に基づく立入検査を猟銃所持者に対して行うことを仮定すると、その際は、装弾や火薬類しか検査の対象にできません。

まずは〝本体〟の猟銃の保管状況などを検査して、その流れで実包も検査する、というのが警察側の本来の目的でしょうから、立入検査は銃刀法に基づいて実施しなければ目的を達成できないことになります。

 

よって、火取法上、警察は猟銃所持者に対して立入検査を通告なしに行うことは出来るっちゃ出来ますが、現実的な選択肢にはなり得ない、と言えます。

 

3 大事な注意事項

(1)なりすましに要注意

猟銃所持者にとって、立入検査のルールやタイミングなどをよく理解しておくことは大変重要です。

 

関連団体や所轄署からもたびたび注意喚起がありますが、警察官を装って所持者宅に不法者がやって来る可能性が、現実的なものとしてあるからです。

特に最近ではSNSなどにより、自分から個人情報を世に晒してしまっている方が多いと思われます。

 

所持者の住所や名前を知ろうと思えば、知れてしまう世の中になっており、所持出来ないけど何とか猟銃を手にしたい者に対して、不法に奪取する余地を与えてしまっているとも言えます。

 

猟銃に関する立入検査は、「警察官がいきなり来ることはない」ことをしっかり意識し、逆にいきなり「銃を見せてくれ」と言って警察官を名乗って自宅に来た者がある場合は、自宅に上げずに、所轄署に立入検査の日程についてすぐに確認しましょう。

※警察手帳の提示を求めるのも1つの手ですが、現在は精巧なレプリカの入手が可能であり、一瞬で素人が本物と見分けることは不可能です。また、そもそも手帳の有無に限らず、立入検査をいきなり行うことはないという前提に基づき、すぐに所轄署に電話確認するのが最善でしょう。

 

(2)猟銃や装弾は普段からよく確認を

立入検査がいきなり来ることはない、検査の前にロッカーの中は確認すればええわ、という理解では本末転倒です。

銃の紛失、盗難を防止し、安全に銃を取り扱うためにも、普段から保管している銃や装弾の点検やメンテナンス、帳簿の管理を怠ることなく、ハンティング、シューティングライフを楽しみましょう。

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