どうも、こんにちわ。番頭です。
これから1挺目の猟銃を所持しようという方からいただくご相談の中で、最近、立て続けにミロク製作所さんのMSS-20を検討しているという方が複数(お互いに面識などなし)おられました。
そこで、その方々にお話しした内容になるのですが、MSS-20を1挺目の所持銃に、とお考えの方に伝えたいことをまとめました。
1 ミロクMSS-20とは
(1)ボルト式20番散弾銃
MSS-20とは、日本を代表する猟銃メーカー、ミロク製作所のオリジナル銃で、口径が20番のボルト式散弾銃です。
ミロク製作所のカタログから抜粋
過去には交換チョーク式もあったようですが、現在カタログ掲載銃は、シリンダー固定チョークのみ。
使用する装弾は、サボット弾ではなく通常のスラッグ弾が想定されます(もちろん、ほかの散弾も撃てないことはありません)。
(2)性能や特徴
特徴は以下のとおりで、文字通り非常に特徴的なものとなっています。
●ボルト装填式
●口径20番のみ(12番モデルはない)
●着脱式箱型弾倉(1発用)→装填は薬室と弾倉合わせて2発
●ライフル照星と照門が付いたスラッグ銃身(平滑)
●スコープリングは専用品
これらの特徴から導き出される性能は 50m超の中~遠距離における20番スラッグの精密射撃が可能 というものです。
私自身は所持したことはありませんが、所持経験のある方が何人かブログなどでその命中精度を披露してくれており、その性能が実証されている高性能なスラッグ銃なのです。
大事なことなのでもう一度言いますが、MSS-20は 高性能なスラッグ銃 なのです。
2 1挺目にどうなの?
本題に入りますが、高性能なスラッグ銃ではありますが、1挺目の銃として所持を検討している方がいる場合に、誰にでもおススメできるものではない、と私は思って相談者の方にも説明いたしました。
(1)1挺目におススメできる方
まず、こちらとしてもおススメできる方というのは、上記のような特化した特徴と性能を理解した上で、自分がやりたいことと合致している方、です。
具体的には、MSS-20で
●狩猟は大物猟しかしない。しかも本州域で、ある程度距離のある猟場を想定
●射撃は静的射撃(スラッグ射撃・ランニングターゲット)しかしない
という方です。
なんで目的がそんなに絞られるのか?というと、次のおススメできない理由につながります。
(2)1挺目におススメできない方
MSS-20が持つ、中遠距離射撃に特化した特徴は、それ以外の使い方には不向きだと言えます。
誤解のないように付け加えますが、MSS-20で射撃や狩猟を幅広く楽しんでいる方ももちろんおられます。
ただ、一定の使い方には「不向き」であり、それが故に初めての所持銃には敢えておススメすることはしない、ということです。
●ボルト装填式
1発の命中精度は高いですが、連射ができず、2発目の装填・発射は自動銃や上下二連銃よりも遅くなります。
これは近距離での大物猟には不利となりますし、半矢の猪や熊などの逆襲への対応が遅れる恐れがあります。
●弾倉含め装填数は2発まで
実猟を想定すると自動銃のように合計3発を装填できる方が有利です。
●ライフル照星・照門のスラッグ銃身
7.5号弾などのいわゆるバラ弾を撃つには、リブ銃身の方が向いています。
そもそもスラッグ銃身は鳥猟やクレー射撃に不向きな銃身なのです。
●シリンダー固定チョーク
基本的にスラッグ弾を撃つための絞りのない固定チョークなので、スキート射撃なら出来ないことはありませんが、やはりクレー射撃や鳥猟にはそもそも不向きです。
以上のようなことを考えると、MSS-20 を1挺目におススメできない方というのは、大物猟をしたいというほかに
●クレー射撃も楽しみたい
●鳥猟も楽しみたい
●1挺の銃でいろいろやってみたい
という方が該当します。
3 我が大阪の事情
(1)2挺目以降ならアリの理由
さて、わが大阪に限定しますと、MSS-20は、2挺目以降の所持銃には十分アリですが、前述の機能や性能を知らずして1挺目に所持することはやめた方がいいかと思います。
なぜなら、大阪では2挺目以降の増銃や入替えをするには、1挺目の所持銃で相応の使用実績を積まなければなりませんが、MSS-20を1挺目として所持した場合に、使用実績を作るのはほかの銃に比べるとハードルが高いと思えるからです。
使用実績というのはすなわち、狩猟に持ち出した回数と、クレー射撃も含み消費した弾の数量、です。
狩猟は大物猟のみ、射撃は静的スラッグ射撃のみ、という目的を最初から持ってMSS-20を所持するのであれば、それらの実績をガンガン積めばいいのですが、そうでない場合はどうなるでしょうか?
(2)もし理解しないで1挺目に所持したら?
例えば先輩や周囲から勧められるまま、性能などをよく理解せずにMSS-20を1挺目に所持した大阪在住者はどうなるでしょうか?
大阪など都市部で猟銃を所持する人の大半は、スポーツとしての趣味で狩猟や射撃を楽しみたい方々だと思います。
せっかく所持した猟銃ですから、大物猟のほかにもたまにはカモ猟に行ったり、里山でキジやキジバトを狙ったりしたいと思うものですが、MSS-20はそういった使い方には不向きであることは前述のとおりです。
あきらめて大物猟だけをするとしても、たまに参加するグループ猟で自分が撃てる機会に毎回恵まれるとは限りません。
警察からは猟期前後だけでなく出来るだけ射撃場にも通って弾を消費するよう指導がありますが、静的射撃だけではなく、クレー射撃もやってみたいというのが多くの方の心情でしょう。
しかし、やはりMSS-20の特徴が裏目に出ることはもうご理解いただけると思います。
MSS-20は残しておくとして、汎用性のある銃を早期に増やしたいと思っても、まずはMSS-20で実績を積まなければ増銃もままなりません。
その間にストレスを溜め込み、猟場や射撃場から足が遠のいてしまう、なんてことも可能性としては少なくないと思います。
(3)1挺目におススメできる銃は?(大阪版)
上記の理由から、MSS-20は2挺目以降にはおススメできるとして、じゃあ1挺目におススメできる銃は何なのか?も少しだけ触れておきます。
大阪やその近郊での事情は似たようなものだと思いますが、狩猟をすることは最低限含まれるとすると、それらの地域で言いますと
●交換チョーク式銃身が付属している自動銃
●交換チョーク式銃身の上下二連銃
ということになります。
狩猟をするということはメインに据えて、少なくとも7.5~3号ぐらいのバラ弾と、スラッグ弾を発射できる銃身であることは必要です。
替え銃身を最初にいろいろ入手できないことを前提にすると、交換チョーク式銃身のものが良いでしょう。
クレー射撃の公式戦に出ることを考えないのであれば、より狩猟向きの自動銃を選ぶのがベターでしょう。
一方で、狩猟メインとは言いつつも、1年を通して見た場合は非猟期の方が長く、その間にクレー射撃をけっこう楽しみたいのであれば上下二連銃が良い、となります。
どちらも汎用性の高い銃になりますので、まずは1挺目の銃でいろいろ楽しみながら(←これが大切)実績を作り、それからもっと特徴のある銃を2挺目以降に所持する、というのが長くハンティングライフ、シューティングライフを楽しみやすいと思います。
4 まとめ
ミロクMSS-20は、高性能であり、その性能はすでに実証済みです。
ただし、その性能を使うだけの目的を持っていることが、所持する喜びや満足につながる銃と言えます。
1挺目の所持銃を考える場合、まずは「銃を所持してやりたいこと」を考え、いくつかあるならその割合を考えることが、銃選びに大切だと思います。